AS/400(現 IBM i)からの移行は、他のオフコン(富士通 K・NEC A-VX 等)の移行とは 本質的に異なる特性 を持ちます。最大の違いは、IBM 自身がいまも長期サポートを継続しており、『移行せず継続する』も有力な選択肢 として残っていること。本記事では、AS/400(IBM i)の現状、4 つの選択肢(継続/クラウドリホスト/オープン化/パッケージ移行)、RPG 資産・5250 端末・DB2 for i の扱いまで、中堅企業の経営層向けに整理します。
『AS/400、続けるか脱却するか』とお悩みですか? 4 つの選択肢を整理して判断材料を作ります。 無料相談 >結論:AS/400 移行は『他のオフコンと違う』
オフコン移行と一括りに語られがちですが、AS/400(IBM i)は次の点で 富士通 K・NEC A-VX・日立等の国産オフコンとは根本的に異なります。
| 観点 | 国産オフコン(富士通 K 等) | AS/400(IBM i) |
|---|---|---|
| メーカーサポート | 多くが標準保守終了済み | IBM は長期サポート方針を継続 |
| 新機種の提供 | 停止 | Power サーバとして継続提供 |
| 技術者の確保 | 極めて困難 | 困難だが市場に一定数 |
| クラウドへの選択肢 | 移行が必須 | IBM Power Virtual Server でリホスト可 |
| 『継続』の選択肢 | 事実上なし | 有力な選択肢として残る |
このため、AS/400 ユーザーは 『継続するか/脱却するか』を経営判断として持つ意味がある、唯一のオフコンユーザーグループと言えます。
AS/400(IBM i)の現状認識
国内ユーザーと業種傾向
AS/400 は 1988 年の登場以来、製造業・卸売業・建設業の中堅企業を中心に広く導入されました。後継機種は AS/400 → iSeries → System i → IBM i(Power サーバ)と名称・基盤が進化していますが、多くのユーザーが過去の AS/400 名称を慣用 しています。製造業・卸売業・建設業を中心に、現役で稼働している中堅企業は 国内で多数 残存しています(正確な公開統計は IBM 非公開のため、業界推計では数千社規模とも言われます)。
IBM i のロードマップ
IBM は IBM i を『戦略的に維持する基盤』と位置づけており、定期的なバージョンアップとセキュリティ対応を継続。クラウド対応(IBM Power Virtual Server) も提供されており、オンプレミスからの移行先選択肢が拡大しています。一方で、国内の販売パートナー(コンサルティング・SIer)は減少傾向で、稼働は続けられても 『開発・改修できる人材』が枯渇 しつつあるのが実態です。
RPG という独自言語
AS/400 のアプリケーションは RPG(Report Program Generator) で書かれていることが多く、世代により RPG II / III / IV / Free-format RPG など複数バリエーションがあります。COBOL より特殊で、習得者がさらに限定されているため、技術者枯渇の影響を強く受けます。
AS/400 の『4 つの選択肢』比較
選択肢 1:IBM i 継続+周辺改修
IBM i をそのまま継続使用し、必要な周辺機能(Web 化・モバイル対応・連携機能)を追加 する選択肢。IBM のロードマップが続く限り、業務継続性が確保できます。
| メリット | 業務影響が最小/RPG 資産を活かせる/投資が抑えられる |
|---|---|
| デメリット | RPG 技術者枯渇が進行/業務改革効果は限定的/長期的な人材リスク |
| 適合ケース | 業務がパッケージ標準に合いにくい/IBM i 専任エンジニアを確保できる |
選択肢 2:クラウドリホスト(IBM Power Virtual Server)
ハードウェアの所有・運用を止め、IBM Power Virtual Server などのクラウド基盤へ移行。IBM i のワークロードはほぼそのまま稼働します。
| メリット | ハード保守の負担解消/災害対策強化/RPG 資産維持 |
|---|---|
| デメリット | クラウド利用料が継続発生/RPG 技術者問題は未解決 |
| 適合ケース | 業務改革の必要性は低いが、ハードの老朽化・運用負荷を解消したい |
選択肢 3:オープン系へリライト
RPG プログラムを Java・C# などのオープン系言語へ書き換え、Linux/Windows サーバ・クラウドで稼働。
| メリット | 技術者確保が容易/業務改革と同時進行可/長期的な TCO 最適化 |
|---|---|
| デメリット | 初期投資が大きい(8,000 万~2 億円)/期間 18~24 ヶ月/失敗リスク |
| 適合ケース | 業務独自性を維持したいが、AS/400 から脱却したい |
選択肢 4:パッケージ移行(業界特化 ERP)
AS/400 上の自社開発を捨て、業界特化型のパッケージ ERP へ移行。
| メリット | 業務標準化/成功率が高い/中堅企業に最も向く |
|---|---|
| デメリット | 業務をパッケージに合わせる必要/RPG 資産の活用不可 |
| 適合ケース | 業界特化パッケージで業務を吸収できる/業務改革を積極的に進めたい |
AS/400 固有の検討ポイント
RPG 資産の扱い
AS/400 上には数十年蓄積された RPG プログラムがあります。『資産として活かす』か『負債として清算する』か の判断が、選択肢を決める分かれ目。
- 活かす:IBM i 継続またはクラウドリホスト(選択肢 1・2)
- 清算する:オープン系リライトまたはパッケージ移行(選択肢 3・4)
活かす場合も、Free-format RPG への近代化や、現代的な開発手法(バージョン管理・自動テスト)への適応が課題になります。
5250 端末からの脱却
AS/400 の伝統的なユーザーインターフェイスは 5250 エミュレータによるテキストベースのグリーン画面。これは現代の業務スタイル(タブレット・スマホ・Web 連携)と相性が悪く、若手社員の定着率にも影響。Web UI 化・モバイル対応 は、選択肢 1(継続)を選ぶ場合でも必須の改修となります。
DB2 for i の扱い
AS/400 のデータベース DB2 for i は安定性が高く、業務データが大量に蓄積されています。移行先で SQL ベースの他 DB(PostgreSQL・Oracle・SQL Server)へ変換 する場合、データ型・文字コード(EBCDIC → UTF-8)・SQL 方言の違いに注意。
周辺ソフトウェアの扱い
帳票ツール、データ転送ツール、サードパーティ製品など、AS/400 周辺の 独自エコシステム が存在。移行時はこれらの後継対応も検討対象になります。
費用と期間の目安
| 選択肢 | 初期費用 | 期間 | 年間運用費 |
|---|---|---|---|
| ① IBM i 継続+周辺改修 | 500 万~3,000 万円 | 6~12 ヶ月 | 従来と同等 |
| ② クラウドリホスト | 2,000 万~5,000 万円 | 8~12 ヶ月 | クラウド利用料 月数十万~数百万 |
| ③ オープン系リライト | 8,000 万~2 億円 | 18~24 ヶ月 | 新基盤の運用費 |
| ④ パッケージ移行 | 3,000 万~8,000 万円 | 12~18 ヶ月 | パッケージ保守料 年 15~20% |
中堅企業の標準は、業務変化の度合いと業務独自性により ②~④ から選ぶケースが多くなっています。
AS/400 移行のよくある失敗
失敗 1:『継続』選択を経営判断ではなく現状追認で選ぶ
「RPG 技術者がいるから今のまま続けよう」と消極的に継続を選ぶケース。技術者の年齢・退職可能性を経営リスクとして織り込まず、5 年後に技術者がいなくなって慌てる失敗パターンです。継続を選ぶ場合も『次の刷新は何年後か』を同時に決めるべきです。
失敗 2:クラウドリホストを『リライト』と勘違いする
クラウドリホストは 『基盤をクラウドに置き換えるだけ』 で、RPG プログラムも業務も基本そのまま。業務改革効果はほぼなく、ハード保守の負担が消えるだけ。これを『リライトと同等』と勘違いして経営判断すると、期待した効果が出ません。
失敗 3:RPG 資産の評価を客観的にできない
社内の RPG プログラムを『価値ある資産』と過大評価し、リライト・パッケージ移行を見送るケース。実際には 大半のロジックがパッケージ標準で代替可能 なケースも多く、客観評価には第三者の目が必要です。
失敗 4:5250 グリーン画面への愛着で UI 刷新を後回し
「現場ベテランは 5250 画面に慣れている」という理由で UI 刷新を遅らせると、若手社員の定着・新規採用に影響。業務の中身は維持しつつ UI だけ Web 化する 段階的アプローチが現実的です。
AS/400 移行は『継続か脱却か』の経営判断
AS/400 は他のオフコンと違い『継続』が有力な選択肢として残るため、移行の意思決定はより複雑です。『技術的に動かせるか』ではなく、『業務改革のために脱却するか/RPG 資産を活かして続けるか』 の経営判断として捉える必要があります。
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