IBM i(AS/400)の移行は 『継続も含めた 4 つの選択肢』 があり、どの方式を選ぶかが経営判断の核心です。本記事では、中堅企業の IBM i 移行事例を 4 つの方式別に整理。クラウドリホスト/業界特化パッケージ/オープン系リライト/IBM i 継続+Web 化 の各ケースで、業種・規模・期間・投資額・成果を業界一般のモデルケースとして解説します。
※ 本記事のケース 1~4 は、クオンツが過去 25 年で関わってきたプロジェクトおよび業界一般の傾向から作成した モデルケース です。特定企業の個別事例ではなく、中堅企業の典型例として読んでください。
自社に近いケースを見つけたいですか? 業種・規模・課題を伺い、最適な事例の進め方を整理します。 無料相談 >結論:IBM i 移行事例から見える『3 つの傾向』
4 つのケースを並べて見えてくる傾向は、次の 3 つです。
- 『移行ありき』ではなく『継続も含めた経営判断』:4 ケース中 1 ケースは『継続+Web 化』を選択。他オフコンと違い IBM i は継続が有力な選択肢
- 業務独自性のレベルが方式を決める:独自性高 → リライト or 継続/標準化可 → パッケージ移行/変化緩やか → リホスト
- 稼働後 90 日の定着支援が成功の鍵:4 ケースすべて、稼働後の運用サポートを予算化した点が共通
事例の読み方|IBM i 移行の評価軸
他社事例を自社に当てはめて読むには、次の 5 軸で整理すると分かりやすくなります。
| 評価軸 | 確認ポイント |
|---|---|
| 方式 | リホスト/パッケージ移行/リライト/継続+Web 化 |
| 業務独自性のレベル | パッケージ標準で吸収可か、独自開発が必要か |
| RPG 資産の扱い | 活かす(継続・リホスト)/清算する(リライト・パッケージ) |
| 5250 依存度 | 現場が 5250 グリーン画面に強く依存しているか |
| 稼働後の成果 KPI | 業務指標で改善効果を数値化 |
ケース 1:製造業 A 社|IBM i → クラウドリホスト
| 業種・規模 | 自動車部品製造業/年商 60 億円/従業員 180 名 |
|---|---|
| 移行前 | 20 年使用の IBM i(旧 AS/400)/RPG II/III 自社開発/ハード保守費の上昇 |
| 方式 | IBM Power Virtual Server へのクラウドリホスト |
| 期間/投資額 | 10 ヶ月/3,500 万円 |
| 主な成果 | ハード保守費 年 800 万 → 月額クラウド料金 50 万/ハード調達リードタイム解消/DR 対応強化 |
このケースの肝は、『業務改革は急がない、まずハード保守の負担を解消する』 という割り切り。RPG プログラムも 5250 画面もそのまま維持し、基盤だけクラウドへ移行。投資抑制と短期稼働を優先した経営判断が成功要因です。
ただし、これは『時間稼ぎ』の選択肢でもあります。社内の RPG 技術者の高齢化が進行中で、5 年後にはリライトかパッケージ移行への二段階移行を計画中、というのが現実的なロードマップです。
ケース 2:卸売業 B 社|IBM i → 業界特化パッケージ
| 業種・規模 | 食品・酒類卸売業/年商 120 億円/従業員 220 名 |
|---|---|
| 移行前 | 25 年使用の IBM i/RPG+自社カスタマイズ/受発注処理が属人化 |
| 方式 | 食品卸売業界特化パッケージへの全面移行(Fit to Standard 7 割) |
| 期間/投資額 | 14 ヶ月/6,500 万円 |
| 主な成果 | 受注処理工数 35% 削減/在庫精度 95% → 99.5%/属人化解消/取引先 EDI 対応 |
RPG 資産を 『負債として清算する』 判断をしたケース。25 年蓄積された独自仕様のうち、本当に競争力に直結する 3 割だけパッケージにカスタマイズで残し、残り 7 割は業界標準プロセスに合わせる Fit to Standard を徹底。経営層が要件定義の入口で『何をやらないか』を明示したことが、開発費の抑制と稼働後の定着成功につながりました。
ケース 3:建設業 C 社|IBM i → オープン系リライト
| 業種・規模 | 中堅ゼネコン/年商 80 億円/従業員 150 名 |
|---|---|
| 移行前 | 30 年使用の IBM i/RPG IV/工事案件別原価管理が業界特殊/パッケージで吸収不可 |
| 方式 | Java / Spring Framework / PostgreSQL へのオープン系リライト |
| 期間/投資額 | 22 ヶ月/1.2 億円 |
| 主な成果 | 工事原価リアルタイム把握/利益率 +2 ポイント改善/業界トップクラスの原価管理基盤を実現 |
建設業特有の 工事案件別原価集計・出来高による進捗管理 は、業界特化パッケージでも完全に吸収できないケース。RPG 資産の業務ロジックを引き継ぎつつ、Java で書き直す道を選択。投資額は大きいが、業界差別化要因として原価管理機能を磨き上げる経営戦略との整合性が成功要因。
ケース 4:食品製造業 D 社|IBM i 継続+Web 化
| 業種・規模 | 食品加工業/年商 40 億円/従業員 100 名 |
|---|---|
| 移行前 | 15 年使用の IBM i/業務にぴったり合致/RPG 技術者 2 名在籍 |
| 方式 | IBM i 継続+5250 画面の Web 化/モバイル対応 |
| 期間/投資額 | 8 ヶ月/2,000 万円 |
| 主な成果 | RPG 資産を全面活用/5250 端末廃止/タブレットでの現場入力/投資抑制で他経営課題に予算配分 |
他のオフコン(富士通 K・NEC A-VX 等)の移行記事では出てこない、『継続』が経営判断として正解だったケース。理由は ①業務がパッケージ標準に合いにくい食品加工の独自性、②社内 RPG 技術者の継続在籍見通し、③IBM の長期サポート方針、④他経営課題(人材・営業力)への投資優先度。5~7 年後の二段階移行を計画 しつつ、いまは『継続』を選ぶ経営合理性が成立しています。
4 ケースから見える成功要因と失敗要因
共通する成功要因
- 経営層が方式選定に深く関与:技術者・ベンダー任せにせず、経営判断として方式を決め切った
- 業務独自性のレベルと方式の整合:独自性低 → パッケージ、独自性高 → リライトor継続、変化緩やか → リホスト
- 稼働後 90 日の定着支援を予算化:4 ケースすべて、稼働後の運用サポートをプロジェクト範囲に含めた
- RPG 資産の客観評価:「資産か負債か」を経営判断のフレームで整理
- 業務責任者を専任化:本業との兼任ではなく、プロジェクト期間中フルコミット
逆に失敗パターンに陥るケース
- 『継続』を消極的に選ぶ:RPG 技術者の年齢・退職リスクを織り込まず、5 年後に慌てる
- リホストを過大評価:『基盤を移すだけ』なのに、業務改革効果まで期待してしまう
- RPG 資産を過大評価:客観評価せずに継続を選び、結果として業務改革の機会を逃す
- 5250 グリーン画面への愛着:UI 刷新を後回しにし、若手社員の定着・採用に支障
IBM i 移行は『継続も含めた 4 択』が他オフコンとの違い
IBM i 移行の意思決定で最も重要なのは、『継続も含めた 4 択』を経営判断のテーブルに乗せる ことです。他のオフコン(富士通 K・NEC A-VX 等)と違い、IBM の長期サポートが続く IBM i は、継続を選ぶ経営合理性が成立するケースがあります。
ただし、継続を選ぶ場合も 5~7 年後の二段階移行を視野に入れる べき。RPG 技術者の年齢、業務変化の度合い、経営戦略の転換期を見極めながら、『次の刷新』を計画的に進めることが、長期的な経営判断として正しい姿勢です。
株式会社クオンツでは、『IBM i 継続 vs 脱却の経済合理性比較』『RPG 資産の客観評価』『業種・規模に応じた方式選定』 のご相談を、無料で受け付けています。汎用機・オフコンからオープン系・クラウド基盤への移行プロジェクトに 25 年携わってきた経験から、貴社の業務・人材・経営戦略に合わせた現実解を一緒に整理します。机上のコンサルではなく、お客様の現場と並走するスタイルで、次の一歩の選択肢を整理します。