「COBOL保守担当者が来年定年退職する。次の担当者が見つからない」「ベンダーから『COBOL対応できるエンジニアが減っているため単価を上げたい』と言われた」——中堅企業の経営者・管理部長から、こうした危機的な相談が増えています。COBOL技術者の不足は今すでに起きており、2030年に向けてさらに深刻化します。本記事では、COBOL技術者不足の現状、2030年に何が起きるか、今から取れる対策3選を、経営者視点で整理します。
『COBOL担当者が退職したら誰も保守できなくなる』とお悩みですか? 25 年の経験でリスクと対策を一緒に整理します。 無料相談 >COBOL技術者不足の現状|数字で見る「静かな危機」
COBOL技術者の不足は突然始まったことではありません。10年以上前から予測されていたことが、今まさに現実になっています。
| 指標 | 現状 | 経営への影響 |
|---|---|---|
| COBOL技術者の平均年齢 | 50代以上が多数。新卒・若手のCOBOL習得者はほぼゼロ | 5~10年以内に現役技術者の大半が退職・引退 |
| COBOL学習者数 | 大学・専門学校でのCOBOL教育はほぼ廃止 | 市場に新規COBOL技術者が供給されない |
| COBOL保守の外注単価 | 需給逼迫により、過去3~5年で1.5~2倍に上昇している企業も | 保守・改修費用が毎年増加する一方通行 |
| COBOL稼働システム数 | 金融・製造・流通を中心に、今も多数の基幹システムがCOBOLで稼働 | 「動いているから大丈夫」が最も危険な状態 |
特に中堅企業(年商30~300億円)では、社内にCOBOL保守担当者が1名しかいないというケースが珍しくありません。その1名が退職・長期病欠した場合、障害対応も改修も止まります。これは「技術的な問題」ではなく、「事業継続の問題」です。
2030年に何が起きるか|タイムラインで整理する
「2030年問題」は、COBOL技術者の大量退職が一気に現実化する時期を指します。具体的に何が起きるかを整理します。
2026~2028年:保守コストの急騰フェーズ
COBOL技術者の需給逼迫がさらに進み、保守・改修の外注単価が現在の1.5倍以上になる可能性があります。また、対応できるベンダーが減少するため、「費用を払っても改修してもらえない」状況が発生し始めます。この段階でまだCOBOLシステムに依存している企業は、「移行したくても移行できない」高コスト体質に陥るリスクがあります。
2028~2030年:技術者の大量引退フェーズ
現役COBOL技術者の多くが60歳前後に達します。「あと2年で退職する」というCOBOL担当者の動向が、企業の基幹システムに直撃します。引き継ぎ先が見つからないまま退職が進み、「誰も触れないシステム」が急増します。この時期に移行プロジェクトを新たに立ち上げようとしても、移行を支援できるCOBOL経験者自体が市場から消えているため、プロジェクトを組めません。
2030年以降:「動いているが誰も直せない」慢性フェーズ
COBOLシステムは稼働し続けます。しかし障害が起きたとき、改修が必要なとき、「対応できる人間がいない」という経営リスクが常態化します。障害が長期化する・新しい取引先要件に対応できない・法改正への対応ができないという状況が続きます。
今からできる対策3選
COBOL技術者不足への対策は「移行一択」ではありません。企業の状況・予算・タイムラインに応じて、3つの選択肢があります。
対策① COBOL保守の外注体制を整備・複数化する
最もすぐに取れる対策です。現在COBOL保守を1社・1名に依存している場合、複数の保守ベンダーと関係を作り、セカンドソースを確保します。また、現在の担当者が退職する前に「業務ロジックのドキュメント化」を依頼することも重要です。ドキュメントがない状態での担当者交代は、引き継ぎコストが3~5倍になります。費用目安:ドキュメント化 200~500万円。
対策② COBOL技術の内製化・若手への知識移転
社内の若手ITエンジニアにCOBOLの基礎を習得させ、最低限の保守能力を持たせます。COBOL研修の費用は1名あたり数十万円程度ですが、「学んだのに実務で使えない」という問題があります。また市場でCOBOL技術者を採用しようとしても、現在はほぼ不可能に近い状況です。この対策は「移行完了まで数年をつなぐ」緊急措置として位置づけるのが現実的です。
対策③ COBOLシステムの計画的な移行着手
最も根本的な解決策は、COBOLシステムをオープン系・クラウド基盤に移行することです。移行は費用・期間がかかりますが、「2028年以降は移行支援できるCOBOL経験者自体が減る」ため、早く着手するほど選択肢が広がります。移行手法には自動変換・リライト・リビルドの3つがあり、費用目安は2,000万~2億円、期間は8~24ヶ月です。
| 対策 | 効果が出るまで | 費用目安 | 根本解決になるか |
|---|---|---|---|
| ① 外注体制の整備 | 3~6ヶ月 | 200~500万円 | △(応急処置) |
| ② 内製化・知識移転 | 6~12ヶ月 | 50~200万円 | △(移行までのつなぎ) |
| ③ システム移行 | 8~24ヶ月 | 2,000万~2億円 | ◎(根本解決) |
現実的な対応は、①②を短期で実施して「当面のリスクを抑え」ながら、③の移行計画を並行して進めるアプローチです。
対策を先送りした場合の失敗パターン
失敗 1:「動いているから大丈夫」で先送りし続けた
COBOLシステムは非常に堅牢です。数十年動き続けることも珍しくありません。しかしこの「安定稼働」が「まだ大丈夫」という先送りの心理的根拠になります。問題は「システムが動くかどうか」ではなく「システムを維持できる人間がいるかどうか」です。担当者が退職した後に初めて「どうにもならない」と気づくケースが最も多いパターンです。
失敗 2:担当者退職直前になって移行を急いだ
「担当者が来年定年」と分かった段階で移行プロジェクトを急いで立ち上げようとすると、現行システムの解析・ドキュメント化を並行させながらプロジェクトを進めることになり、コストと期間が1.5~2倍に膨らみます。担当者が現役のうちに「知識の体系的な文書化」と「移行計画の立案」を始めることが、最大のコスト削減策です。
失敗 3:COBOL技術者不足を「IT部門の問題」として経営が関与しなかった
「COBOL保守の問題だから情シスに任せる」という判断が、経営課題の放置につながります。COBOL技術者が退職して基幹システムの保守ができなくなるのは、受注・出荷・請求・在庫管理・生産計画が止まるリスクを意味します。これは経営判断が必要な「事業継続リスク」であり、IT部門だけで解決できる問題ではありません。
まとめ|COBOL技術者不足は「今すぐ」動くべき経営課題
COBOL技術者不足は2030年に突然始まる問題ではなく、今この瞬間も進行している構造的な課題です。
- COBOL技術者の平均年齢は50代以上、新規供給はほぼゼロ
- 2028~2030年:大量引退フェーズで「移行支援できる技術者自体が市場から消える」
- 今からできる対策は①外注体制の複数化(応急)②知識移転(つなぎ)③システム移行(根本解決)の3択
- 最大の失敗:担当者現役のうちに動かず、退職後に気づく
COBOL資産の移行手法(自動変換・リライト・リビルド)の詳細は、COBOLからJavaへの移行ガイドをご参照ください。COBOL移行の全体像については、COBOLマイグレーションの完全ガイドも合わせてご覧ください。
株式会社クオンツでは、『COBOL技術者不足のリスク診断』『業務ロジックのドキュメント化支援』『COBOLシステムの移行計画立案』のご相談を、無料で受け付けています。汎用機・オフコンからオープン系・クラウド基盤への移行プロジェクトに 25 年携わってきた経験から、貴社のCOBOL資産規模・担当者の在籍状況・予算感に合わせた現実解を一緒に整理します。机上のコンサルではなく、お客様の現場と並走するスタイルで、次の一歩の選択肢を整理します。