「2025 年の崖は大企業の話で、うちのような中小企業には関係ないのでは」「中堅企業でも対応が必要なのか」——こうした疑問を持つ経営者に向けて、本記事では大企業との違いを踏まえて整理します。2025 年の崖は、大企業だけでなく中小・中堅企業にも関係します。むしろ、人材・予算・保守体制の余裕が少ない企業では、リスクが深刻になりやすいケースがあります。大企業との違いと、中小・中堅企業が取れる具体的な打ち手 3 選を整理します。
『中小企業でも 2025 年の崖への対策が必要か、自社の状況を確認したい』とお悩みですか? 25 年の経験で自社への影響と打ち手を一緒に整理します。 無料相談 >2025 年の崖と中小企業への影響は?|深刻になりやすい理由
2025 年の崖は、大企業だけでなく中小・中堅企業にも関係します。むしろ、人材・予算・保守体制の余裕が少ない企業では、リスクが深刻になりやすいケースがあります。その理由を大企業と比較して整理します。
以下は一般的な傾向としての比較です。実際のリスクは、企業規模だけでなく、システム数、保守体制、担当者の属人化度、ベンダー契約状況によって変わります。
| 比較項目 | 大企業 | 中小・中堅企業 |
|---|---|---|
| システム保守の担当者数 | 複数名で分担できる場合が多い | 1 名のみのケースがあり、その担当者の退職で保守・改修の継続が難しくなる |
| 移行プロジェクトの予算 | 数億円規模の予算を確保しやすい | 数千万円の予算確保が経営上の大きな意思決定 |
| IT 専任部門の有無 | 情報システム部門が存在し、移行を推進しやすい | 情シスが 1~2 名、または兼務。移行推進リソースが不足しやすい |
| ベンダー交渉力 | 複数ベンダーを比較・交渉しやすい | 特定ベンダーへの依存が強くなりやすく、交渉力が限られる |
| 経営への直撃リスク | 基幹システムが 1 つ止まっても他でカバーできる場合もある | 基幹システムが 1 つ止まると、受注・出荷・請求など主要業務に大きな影響が出る可能性 |
中小・中堅企業では、リソース・予算・ベンダー交渉力の余裕が限られる ため、問題が顕在化したときに影響が直撃しやすくなります。担当者 1 名に知見が集中している場合、その退職が保守・改修・移行計画の大きなリスク になります。
中小・中堅企業特有の 4 つのリスク
リスク 1:担当者 1 名への過度な依存
当社が相談を受ける中でも、年商 50 億円規模の中堅製造業で、基幹システムの保守を 1 名の COBOL 担当者や特定の外注ベンダー 1 社に依存しているケースがあります。この状況では:
- その 1 名が退職・長期病欠した場合、障害対応や改修に大きな遅れが出る可能性 がある
- 引き継ぎを依頼しても、業務ロジックが担当者の頭の中にしかない場合、引き継ぎに時間がかかり、重要な業務ロジックが十分に残らない可能性 がある
- 移行プロジェクトに着手しようとしても「その担当者なしでは何も進まない」という状況に陥りやすい
リスク 2:「少し待てばいい」という先送りの連鎖
中小・中堅企業では、単年度の利益計画や設備投資計画との兼ね合いから、IT 刷新の判断が後回しになりやすい傾向 があります。「今期は売上が厳しいから来期に」「来期は設備投資があるから再来期に」という先送りが続くと、問題が顕在化してから動き出す、という遅いタイミングになってしまうことがあります。
リスク 3:経営と IT の橋渡し役が不足する
中小・中堅企業では、経営判断と IT 課題をつなぐ役割が不足し、情シス任せになりやすいケース があります。しかし 2025 年の崖は「IT の問題」ではなく「経営の問題」です。IT 担当者だけでは、予算確保・業務部門調整・投資判断まで進めることが難しく なります。
リスク 4:移行費用が「資金面でも投資判断としても重い」
年商 30 億円規模の中堅企業にとって、5,000 万~1 億円の基幹システム移行費用は、資金面でも投資判断としても重い意思決定 になります。競合他社も同じ課題を抱えているという認識が薄く、「投資対効果が不確かな IT 投資に踏み切れない」 という経営判断の壁があります。
中小・中堅企業向けの具体的打ち手 3 選
リソース・予算・人材が限られる中小・中堅企業向けに、現実的な打ち手を 3 つ絞って整理します。
打ち手 1:今すぐ「担当者ヒアリング」を始める(外部費用は原則不要~150 万円程度)
最初の一手は、在籍中の担当者から業務ロジックを聞き出すことです。フォーマルなドキュメント化でなくても、本人の同意を得たうえで、録音しながら担当者に業務フローを説明してもらうだけでも価値があります。録音データや議事録は、社内の機密情報として適切に管理してください。退職前の最後の機会を逃さないことが最重要です。
- 目安として、担当者の退職・再雇用終了が 3 年以内に見込まれる場合:早期着手
- 5 年以上先の場合でも、半年以内に着手計画を立てる ことを推奨
- 費用目安:録音・議事録作成のみであれば社内工数中心で始められる。外部支援を使う場合は 50 万~150 万円程度 が目安
打ち手 2:「小さく始める」移行アプローチを選ぶ
基幹システム全体を一気に刷新する一括移行は、中小・中堅企業にとって 負荷が大きくなりやすい ため、段階的アプローチが現実的な選択肢になります。「最もリスクの高い 1 システムから先行移行する」「リホストで動作環境だけ先に移行し、数年後にリライトする」 といった進め方が選びやすくなります。
| アプローチ | 費用目安(当社想定・限定範囲) | 期間 | 中小企業への適合性 |
|---|---|---|---|
| リスク最大の 1 システムを先行移行 | 1,500 万~5,000 万円 | 8~14 ヶ月 | ◎ 優先対象になりやすい。初回は業務影響と難易度を見て判断 |
| リホスト(動作環境移行)→ 後でリライト | 1,500 万~5,000 万円(第 1 段階) | 8~14 ヶ月(第 1 段階) | ○ ハードウェア保守期限が近い場合に有効 |
| クラウド型 ERP への段階的移行 | 500 万~3,000 万円(初期導入) | 6~12 ヶ月 | ○ 業務がシンプルで、標準機能に業務を合わせられる場合に有効 |
上記は 当社想定の概算であり、限定範囲から始める場合の初期費用目安 です。実際の費用は、対象業務、画面数、帳票数、データ移行、アプリ改修、ライセンス費、並行稼働期間によって大きく変動します。社内工数、並行稼働、教育研修、データ移行、追加改修まで含めると、実質総費用はベンダー支払額の 1.3~1.5 倍程度 になる場合があります。
打ち手 3:IT 導入補助金・ものづくり補助金を活用する
中小企業は補助金を活用できる場合があります。IT 導入補助金・ものづくり補助金などを活用できる場合があります。ただし、補助率・上限額・対象経費・申請条件は年度や公募回によって変わるため、最新の公募要領を確認してください。
採択されれば、補助対象経費の一部について 実質負担を抑えられる可能性 があります。ただし、対象外経費や上限額があるため、総事業費全体がそのまま半額になるとは限りません。
注意点:
- 補助金の採択は審査次第であり、不採択のリスクもある
- 多くの補助金では、交付決定前に発注すると対象外になる場合がある
- 補助金なしでも着手できる計画を立て、補助金は補助的な選択肢として活用する スタンスが重要
中小・中堅企業で対策が進まない失敗パターン
失敗 1:情シス任せになり、経営判断として扱われなかった
当社が相談を受ける中でも、情シスが問題を把握している一方で、経営判断や予算確保まで進まず止まっているケース があります。2025 年の崖への対応は「IT 部門だけで解決する問題」ではなく、「経営者が投資判断を下す問題」 です。情シスからの提言を「承認・予算確保・プロジェクト推進の意思決定」という形で受け取ることが経営者の役割です。
失敗 2:「大企業向けの話」と思い込み、自社の状況を確認しなかった
「うちはメインフレームを使っていないから関係ない」「規模が小さいから大丈夫」という思い込みで、自社のシステム棚卸しを省略するケースです。COBOL でないシステムでも、構築から 20 年以上経過し、担当者・設計書・保守体制が属人化している場合は、担当者引退・保守費高騰・法改正対応困難といった共通リスクを抱えることがあります。まず自社システムの棚卸しをすることが全ての出発点です。
まとめ|中小企業こそ「早く・小さく」始めることが重要
- 2025 年の崖は 中小・中堅企業でも深刻になりやすいケースがある(担当者 1 名依存・予算制約・IT 人材不足)
- 中小企業特有の 4 リスク:担当者 1 名依存・先送りの連鎖・経営と IT の橋渡し役不足・投資判断の壁
- 打ち手 3 選:① 今すぐ担当者ヒアリング ② 小さく始める移行アプローチ ③ 補助金を補助的な選択肢として活用
- 大きな失敗要因:経営者が関与しないまま、情シスだけで抱えてしまうこと
株式会社クオンツでは、『中小・中堅企業向けのシステムリスク診断』『補助金活用を含む移行計画の立案』『小さく始められる移行アプローチの選定支援』 のご相談を、無料で受け付けています。汎用機・オフコンからオープン系・クラウド基盤への移行プロジェクトに 25 年携わってきた経験から、貴社の規模・業種・予算感に合わせた現実解を一緒に整理します。机上のコンサルではなく、お客様の現場と並走するスタイルで、次の一歩の選択肢を整理します。