ペーパーレス化やテレワークの増加により、公的機関の発行書類や企業間の取引において、電
子契約の利用が増加しています。
電子契約では電子サインや電子署名が、従来の書面で交わす捺印やサインの役割を担ってい
ます。
電子サインや電子署名は、紙代や印紙代を削減できる点や、業務の効率化に繋がる点などメ
リットが多く、注目が集まっています。
とはいえ未だ普及率は高いとはいえず、馴染みが薄いことから、導入に躊躇している企業担当
者もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、電子署名と電子サインの違いを中心に、両者の法的効力や活用方法について解
説します。
そもそも電子署名と電子サインとは
![](https://quanz.co.jp/blog/wp-content/uploads/2021/05/電子署名とは-min-1024x796.jpg)
企業同士の取引やサービスの利用など、契約を交わす際には、必ずお互いの承諾意思を確認
するために署名や捺印が必要です。
従来は紙の書面が一般的だった契約も、最近では電子契約書を用いて、オンライン上で契約を
締結する機会も増えています。電子契約書に同意する場合には、電子サインまたは電子署名を
もって承諾したことを示します。
しかしそもそも、電子サイン、電子署名とはどういうものなのでしょうか。それぞれ詳しく見ていき
ましょう。
電子サイン
電子サインとは、電子上での契約を行う際に、契約に対する合意や本人確認のための記録・認
証を行う承認方法として、広く用いられています。
電子サインは電子契約書への署名だけでなく、以下のような内容も広い意味では電子サインに
含まれます。
・メールアドレスやパスワードでの認証・本人確認
・指紋や声紋での生体認証
電子サインは、ツール等を導入することで比較的簡単に利用できるため、電子署名と比べると導
入企業が多いと言えます。
電子署名
電子署名とは電子サインの中でも、より本人確認を厳密に行い、法的証明力を示せる承認方式
です。
電子署名を行う際、認証局という第三者機関の承認が必要です。具体的には認証局によって以
下の確認が行われます。
● 契約締結者双方の正確な本人確認
● 契約内容が電子署名法に準拠しているか
● 契約途中で内容の改ざんがないか
上記の通り電子署名は、認証局を経由した厳密な本人確認が行えるため、法的証明力を要する
契約で活用されることが多いです。
電子署名を行うには手間や時間がかかりますが、契約の安全性や法的効力の観点から注目を
集めており、ビジネスシーンだけでなく公的機関でも導入されるなど幅広い活用シーンが見られ
ます。
電子署名についてさらに詳細をまとめていますので、電子署名について深く知りたい方は以下の記事もご覧ください。
電子署名とは|仕組みや導入メリット把握でペーパーレス時代を先取り
電子署名と電子サインの違い
電子署名と電子サインの主な違いとしては、以下の2点が挙げられます。
本人確認の正確さ・法的効力
電子サインと電子署名には本人確認の正確さと法的証明力において違いがあり、電子署名の方
が法的効力が強い承認方式です。
電子署名を行う際に必要な電子証明書は、認証局という国の審査を受けた第三者機関が発行
する文書です。
電子証明書を発行するために、契約元の企業は登記簿謄本に記載されている会社名、住所、代
表者名など正しい情報を提出しなければなりません。登録と相違がある場合は受理されないた
め、正確な本人確認が行われます。
認証局では申請された内容が電子署名法の要件を満たしているのかを確認しています。加えて
独自セキュリティによって細かく記録がつけられており、途中で電子契約書の改ざんがないかも
確認できます。
一方、電子サインの場合は認証局を介さないため、本人確認の正確さや法的効力に関しては電
子署名には劣ります。
とはいえ電子サインも、メールアドレスなどの認証によって本人確認が行われ、電子サイン履歴
も残るため、法的効力は有しており、一般的な契約書や注文書などに活用されています。
契約相手への負担
電子署名と電子サインを比較すると契約相手への負担も異なり、電子署名の方が契約相手に対
して負担は大きいといえます。
電子署名を行う場合、電子契約書を送る企業はもちろんのこと、契約先企業に対しても厳正な本
人確認が求められます。
そのため契約先企業にも電子証明書の発行が行われるので、同様に厳正な本人確認が求めら
れます。本人認証がされた場合、電子署名を行える許可が認証局から得られるといった流れで
す。
このように電子書名は安全な契約を行える反面、契約相手にも時間や手間がかかってしまうた
め、電子サインよりも負担が大きいです。
電子署名と電子サインの活用方法
![](https://quanz.co.jp/blog/wp-content/uploads/2021/05/iStock-1141235861-min-1024x861.jpg)
電子署名と電子サインを実際に自社で活用する場合、それぞれの性質に合わせて適切な活用
方法が望まれます。
では具体的に、電子署名と電子サインの活用方法についてご紹介していきます。
電子サイン|一般の契約書
電子サインは、以下のような場面で活用されています。
・家電量販店でのスマートフォンやポケットWi-Fiの契約
・保険契約の申し込み
・クレジットカードの申し込み、利用時
・ホテルへのチェックイン時
・オンラインバンキング(指紋による生体認証)
電子サインは日常生活での活用場面が多く、導入するとペーパーレス促進や費用削減、記録・
有効性の観点から多くのメリットがあります。
電子署名|法的証明力を求められる文書
一方、電子署名は以下のような活用方法が一般的です。取り入れられている場面として、以下の
ものが挙げられます。
・秘密保持契約などを含んだ法人間の商取引契約
・福利厚生関連の人事文書
・不動産売買契約
電子サインより高い法的証明力を示せる電子署名の性質上、重要な契約や申請、金銭的な損失
を避ける場面、マイナンバーが必要な場面などでの利用が多いです。
自社での業務に許可申請や届け出が多い場合や、多数の取引先と契約を交わすことが多い場
合には、導入しておくことで、電子署名を求められた際にも対応しやすいでしょう。
まとめ
電子サインや電子署名には、法的効力や相手への負担といった観点から、さまざまな違いがあ
ります。最後に両者の特徴を今一度確認しておきましょう。
法的効力 | 契約相手への負担 | 主な活用場面 | |
電子サイン | 弱い | 小さい | Wifi、保険、クレジットカードなど 対消費者との契約を結ぶ場面 |
電子署名 | 強い | 大きい | 秘密保持契約や福利厚生など 機密性の高い契約を結ぶ場面 |
今後、電子契約を導入する企業はますます増え、電子署名や電子サインがより普及すると予想
されます。
ぜひ今回の記事を参考に、電子署名や電子サインについて理解を深めていただき、必要な時に
自社にとってどちらが最適なのか選べる状態にしておきましょう。