電子サインの中でも、より厳格な本人確認を行い、高い法的効力を持つ電子署名。
電子署名を利用する企業や公的機関は続々と増えていますが、機密性の高い文書での使用頻度が多いからこそ、適法であるのかは気になるところです。
良かれと思っても、電子署名が無効と判断されるケースも少なからず存在します。
そこで本記事では、電子署名の法的証明力や関連する法律についてご紹介します。
電子署名が適法である理由
日本において電子署名は、適法であるとされています。
電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)や民法等によって、以下3つの点から、電子署名の適法性を示す根拠を説明します。
参照
手書きの署名や捺印は必須ではない
一つ目の理由は契約等の合意を示す証拠として、必ずしも手書きの署名や、印鑑による捺印が必要とされていない点が挙げられます。
電子署名は紙媒体の契約書における、押印やサインと同等の効力を有しています。
そのため企業間で契約を行う場合、契約書に電子署名を利用しても、契約書としての有効性を示すことができます。
ただし、訪問販売のクーリングオフの書面、定期不動産賃貸契約といった一部の文書では、紙媒体での書類が必要です。
全ての文書に該当するわけではないため、電子契約を締結する際は、事前に電子署名が適用される文書であるか確認しましょう。
契約書の形態は自由
また一般的な法原則として、契約書の形態に制限は設けられていない点も、電子署名が適法である理由の一つと考えられます。
紙文書での契約・口頭契約・電子契約いずれの契約形態においても、契約は成立するとされています。
つまり電子署名を使用した電子契約を用いる場合でも、契約書としての十分な効力を持つということです。
電子契約は法的証明力をもつ
電子契約は、紙媒体の契約書同様に、法的な証明力を有します。
一般的に、契約に問題が発生した場合、契約内容の正当性を証明するために、裁判所へ証拠を提出しなければなりません。
この時に裁判所に提出する証拠材料として、電子契約を含む電子記録の提供が可能とされています。したがって電子署名を使用した電子契約書であっても、裁判での法的証明力を有します。
電子契約に関係する法律
現状における電子契約に関係する法律は「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)(以下、電子署名法)」と「電子帳簿保存法」の2種類に分けられます。
それぞれの法律内容について把握し、どのような根拠を持って電子契約が有効となるか確認しましょう。
電子署名法
電子署名法とは、これまで紙文書で使われていた印鑑に代わる証明方法として、電子署名の効力を規定した法律です。
電子署名が印鑑による押印と同じ効力を持つことを保証し、電子署名によってサインをした電子契約の成立を証明します。
また電子署名法には、下記の通り、電子署名の定義と認証業務について記載されています。
<電子署名法(正式名称:電子署名及び認証業務に関する法律)>
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
2 この法律において「認証業務」とは、自らが行う電子署名についてその業務を利用する者(以下「利用者」という。)その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務をいう。
[引用:電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)]
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類を電子データとして保存する方法について定めた法律です。
電子署名を用いた電子契約書類を保存する際には、以下の2点に注意する必要があります。
・電子記録を出力した書面を保存
・電子データとしてそのまま保存
電子帳簿保存法10条の但書によると、電子契約を行った電磁的記録を出力した書面を保存することで、法令上の要件を満たすと定められています。
つまり電子データとして記録した内容を書面として出力し、保存をする場合、法律における契約書としての効力を持つということです。
また書面として保存するのではなく、電子データで保存する場合には、以下の保存要件を満たさなければなりません。
・保存義務(施行規則第8条第1項):電子データを原本として保存する義務
・原本性(施行規則第8条第1項):電磁記録へのタイムスタンプ付与、または電磁記録の訂正及び削除の防止に関する事務処理規定の策定と運用
・関連書類の備付(施行規則第3条第1項第3号、第3条第5項第7号による準用):電子契約ツールの運用マニュアル整備
・見読性の確保(施行規則第3条第1項第4号):ディスプレイ、プリンターへの出力の対応
・検索性の確保:文書管理システムとの連携
電子署名の活用例
電子署名の活用例としては以下のような項目が挙げられます。
・法人企業間での契約
・各種報告書、議事録などへの承認
・地方自治体での手続き
上記のの通り電子署名は販売契約だけでなく、秘密保持契約や調達に係る文書など幅広いビジネスシーンでの活用が進んでいます。
また企業内の各種報告書・議事録などへの承認や、公的機関でも電子署名が導入されています。
具体的には国土交通省等官公庁や地方自治体への電子入札、特許庁への電子出願といった従来紙媒体を使用していたシーンでも、電子署名による申請が可能となりました。
電子署名の不適切な活用例
一方で電子署名の使用が適切ではない例も、以下のような場面で存在します。
・訪問販売に係るクーリングオフの書面
・遺言書
・定期不動産賃貸借契約
訪問販売に係るクーリングオフの書面や遺言状における電子署名は、一般的に不適とされています。
また不動産関係の賃貸借契約を結ぶ際に、電子契約だけでは完結することはできず、必ず書面を作成する必要があります。
「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。」(宅地建物取引業法 第三十四条の二)
このように、電子署名だけでは契約を完結するできない事例も多く存在するため、関連する法律に従う必要があります。
まとめ
ここまで電子署名の適法性を中心に、電子契約に関係する法律や活用例を説明しました。
電子署名は法人企業間での契約締結だけでなく、官公庁での公的手続きにも利用されるシーンが増加しています。
一方で電子署名に適さない文書もあるため、根拠となる法律を確認し使用できるのか確認しましょう。