コストカットや業務効率化など多くのメリットがある電子署名。
しかし便利なサービスであるがゆえに、本格的に導入するとなると、初期費用や月額費用は当然ながら発生します。
そこで今回の記事では、無料で電子署名を利用できる方法や注意点をご紹介します。
まだまだ電子署名を利用するシーンが少ない場合や、有料プランを契約する前に電子署名を試してみたい企業の方は、本記事を参考にしてください。
電子署名を無料で使用する方法
電子署名を無料で使用する方法は、以下の2パターンがあります。
- 無料で電子ツールを提供しているサービスを選択する
- お試しとして一定期間無料で利用可能なサービスを選択する
それぞれのサービスの特徴や機能を調べ、自社のニーズに適しているか確認しましょう。
無料電子署名ツールを活用する
まずは契約期間に関係なく、無料で提供されている電子署名を利用する方法です。
クリエイティブソフトで人気のある「アドビ」や、電子契約の普及率が高いエストニアの企業である「e-sign」の電子署名サービスをご紹介します。
PDFファイルは「アドビ」が便利
アドビ社では、PDFファイル書類専用で、無料で利用できる電子署名サービスを提供しています。
Adobe Acrobat Reader DCとAcrobat DCの「Self-SignデジタルID」を使用し、PDFファイル上でサインする場所を選ぶだけで、電子署名を電子文書に付与することができます。(※Self-SignデジタルIDの作成方法はこちらをご覧ください)
ただしSelf-SignデジタルIDは、厳格な本人性を保証する必要がある場合などには不適であるため、注意が必要です。
正規の電子署名として利用したい場合は、Adobe Acrobat Reader DCに電子証明書を読み込みこんだ上で、電子署名を付与する必要があります。
無料ツール「e-sign」
e-signは、電子署名を完全無料で利用できるサービスです。
世界でもデジタル技術が発展しているエストニアの企業が提供するサービスであり、電子データ上での契約業務に使用できます。
またe-signでは、ブロックチェーンと呼ばれる強固なセキュリティ技術が活用されているため、第三者からのデータ改ざんを防げます。
ただし、タイムスタンプや権限管理といった機能が備わっていないため、利用時には注意が必要です。
有料電子署名ツールをお試しで活用する
完全無料で電子署名を利用する以外に、有料サービスの無料お試し期間を活用する方法もあります。
有料電子署名ツールを契約すると、初期費用・月額費用が発生してしまいますが、無料期間を利用することで、機能や使いやすさを事前に確認できるメリットがあります。
ドキュサイン
ドキュサインとは、アメリカ・カルフォルニア州に拠点を置く、世界最大の電子署名サービスです。
電子契約の発行から電子署名、クラウド上での保管が一括で行えるサービスであり、世界180ヶ国、50万社を超える企業で導入実績があります。
ドキュサインでは、本格的に利用する前に、30日間の無料期間が設けられており、無料期間中でも署名可能な文書の数に制限がないため、電子署名はもちろん、さまざまな用途を無料で試すことができます。
また電子署名を付与した文書は、ドキュサインのクラウドストレージに安全に保管されるため、外部への流出や改ざんを防げます。
無料期間中に実際の機能を試し、電子署名導入後における業務の流れを確認しておきましょう。
ドキュサインについて詳細に解説した記事もありますので、ドキュサインの無料版を試してみたい、事前に詳しく知っておきたい、という方は是非ご覧ください。
世界No.1電子署名サービス「DocuSign(ドキュサイン)」とは|使い方や導入事例を解説
電子印鑑GMOサイン
電子印鑑GMOサインは、大手インターネットグループのGMOが運営する電子署名サービスです。月額無料の「お試しフリープラン」を提供しており、電子署名を月に5回まで利用できます。
また電子印鑑GMOサインでは、電子署名以外に手書きサインや長期署名といった機能を備えているため、無料プランでも利便性に優れているのが特徴です。
無料プランを登録し、電子署名を利用する頻度が多くなったら、有料プランに移行する使い方も良いでしょう。
クラウドサイン
クラウドサインは、日本の法律に特化した、弁護士が監修している電子署名サービスです。
クラウドサインの無料プランは、月に5件までの電子署名付与、タイムスタンプ、認証リクエスト機能を備えています。
そのため、幅広いビジネスシーンでの活用が見込める点が魅力です。
有料プランは月に最低11,000円(税込)がかかることから、電子署名の利用頻度が少なく、コストカットを行いたい企業は無料プランを試してみると良いでしょう。
電子署名を無料で使う注意点
電子署名を無料で提供するサービスを選ぶことで、コストをかけずに利用できるようになります。
しかし、一部の無料サービスで電子署名を使用する際には、さまざまな点に注意が必要です。
公的な文書で電子署名を利用する場合や、複数のファイルで電子署名を使いたい方は、注意点を確認しましょう。
公的文書には不適切な場合がある
1つ目の注意点は、公的文書等には不適切な場合がある点です。
たとえば、本記事の最初にご紹介したアドビ社のSelf-SignデジタルIDは、厳格な身分保証が求められる場合には適さないと言われています。
また無料・有料に限らず、電子署名自体が使用できない文書も存在します。
具体的には以下のような文書が該当します。
- 訪問販売に係るクーリングオフの書面(特定商取引に関する法律第4条)
- 媒介による不動産取引における重要事項説明書等の交付文書(宅地建物取引業法35条,37条)
- 任意後見人契約(任意後見人契約に関する法律)
- 遺言書(民法)
- 定款(会社法)
- 委任状による一定の政府届出
- 定期不動産賃貸借契約(借地借家法)
このように電子署名を利用する場合、法的に有効であるかも確認する必要があります。
対応ファイル形式が限定している
2つ目の注意点は、電子署名に対応したファイル形式が限定されている点です。
アドビ社の電子署名のように、PDFファイルのみに対応しているサービスの場合、WordやExcel形式では使用できません。
対応ファイルが限定していると、必要な形式に変換するための手間が発生します。
有料・無料問わず、電子署名サービスを利用する場合は、使用できる対応ファイルの形式を確認しておきましょう。
まとめ
電子署名を初めて利用する場合や、可能な限り安く利用したい場合、無料で提供しているサービスや、お試しプランの活用をおすすめします。
ただし無料の電子署名サービスを利用する際には、利用予定の文書が電子署名に対応しているかや、ファイル形式に注意しましょう。
本記事を通して、無料で使用できる電子署名サービスを選ぶ際の参考になれば幸いです。